夏用スーツを着るタイミングは？

「夏用スーツ」を着用する一般的なシーズンは「4月〜9月頃」。ただし、気候はその年によって変わるため、タイミングよりも「気温」をバロメーターにするのが合理的でおすすめです。例えば「最高気温が20度を超える日は夏用スーツを選ぶ」などと決めておけば、スーツの選択肢が絞り込め、迷うこともなくなります。ちなみに、ビジネススーツは一般的に「春夏用」と「秋冬用」に大別可能。さらに、「オールシーズン用（通年用）」や「盛夏用」を展開しているブランドもあります。今回は「夏に着ること」を想定した「春夏用」と「盛夏用」をまとめて「夏用スーツ」と定義し、話を進めます。

快適に過ごすために。夏用スーツを選ぶ時に押さえておくポイント

夏用スーツの特徴はいろいろとありますが、夏でも着やすいような工夫がいろいろと盛り込まれています。そのポイントを把握することで重視したいディテールも明確になるので、細かく分けて解説しましょう。

薄くて軽い「夏向き素材」

夏用のスーツに使われている素材は「薄手」「軽量」「通気性が高い」のが一般的。代表的な素材を紹介しますので、その特徴を大まかにインプットしておきましょう。

リネン

通気性や吸水性に優れ、肌触りもドライな「リネン（麻）」は、カジュアルなアイテムでは夏用の素材として定番です。ただしシワが生まれやすいため、ビジネススーツで取り入れる場合はウールと混紡した生地を選ぶのがおすすめです。

コットン

吸湿性に優れ、触感もソフトな「コットン（綿）」も、夏の定番素材。生地としては、シアサッカー、サージ、ギャバジン、コードレーンなどが定番です。軽やかなので春夏用のスーツに使われている印象がありますが、実は秋冬用やオールシーズン用にも使われています。そのため、そのスーツが夏向きなのかをその都度チェックするようにしましょう。ウールにはない色味もコットンの魅力なので、夏っぽい色味を選んで季節感を楽しむのもおすすめです。

ナイロン

「ポリアミド」と表記されることもある「ナイロン」は、化学繊維（合成繊維）の1種で耐久性が抜群。摩擦にも強い素材です。さらに、軽量でシワになりにくいのも特徴。天然素材をブレンドした生地は、ナイロンの長所と天然素材の柔らかい風合いを兼備していることが多く、スーツにもぴったりです。

サマーウール

ウールは秋冬のイメージがありますが、夏用の「サマーウール」も定番です。ただし、「サマーウール」という素材や生地があるわけではありません。細くて硬くなるまで強く撚った強撚の羊毛糸や、細い糸を使ったウール製の生地の総称です。薄手で通気性に優れ、シャリっとした触感なのが一般的。ウールならではの抗菌防臭効果も備えています。生地としては、「トロピカル」や「フレスコ（ポール）」などが代表的です。

実は「仕立て」も重要

キュプラなどの裏地は、着用時の滑りを良くするために不可欠です。ただし、「滑らか」ということは「高密度」であり、通気性は低くなってしまいます。そこで夏用のスーツでは、裏地をできる限り使わない仕立てを採用しているケースがほとんど。3タイプのの仕立てを解説しましょう。

背抜き仕立て

背中〜裾部分の裏地を省いている仕立てが「背抜き」。背面の上部には裏地を残し、型崩れなどを防いでいます。背中部分は生地1枚なので、ジャケットをぶら下げて背中に光を当てると反対側が透けて見えるほど。裏地がない分、軽量性もアップします。その一方、背中の生地が傷みやすくなるので注意しましょう。

半裏仕立て

勘違いされがちですが、「半裏」は「背抜き」よりもさらに裏地を減らしています。（裏地を全面的に配した「総裏」と「背抜き」の中間的な仕立てではありません。）具体的には、背中の裏地部分をさらに上部まで省いたり、前身頃の裾付近の裏地を削ったりして、裏地を「全体の1/3以下」まで省いた仕様です。裏地を省くことによるメリットもデメリットも高まりますが、通気性を優先したい夏用スーツには重宝します。

アンコン仕立て

「アンコン」とは「un-constructed（アンコストラクテッド）」の略で「非構築的」という意味。スーツのジャケットは構築的で立体的なほどエレガントで上質な印象になりますが、あえてアンコンにすることで通気性を高めているのがポイントです。半裏仕立てでも肩部分の裏地やパッドは残っているもの。アンコン仕立てではそれらを含めた裏地をすべて取り除いているため、圧倒的な通気性を実現しているのです。また、パッドを入れず肩を立体的に仕上げるには高い技術が必要です。ただし最近は縫製技術の平均レベルが上がっているため、アンコン仕立ての上品なジャケットが増えています。そうは言っても少しカジュアルな印象にはなるので、その点に問題がなければ盛夏用スーツにはアンコン仕立てが最適です。

「機能性」もチェック!!

いくら通気性を高めても、真夏に汗をかくことを防ぐのは困難でしょう。ただし、汗がついてもすぐ乾いたり、簡単に洗えたりすれば、問題は解決したも同然です。そんな機能性も大切なので、ここでチェックしましょう！

速乾性

その名の通り、素早く乾く機能が「速乾性」です。「吸水性」「吸湿性」「吸汗性」などを兼備していることが多く、汗や蒸れを吸い取り、気化熱によってスーツ内の熱を奪いながら湿気を放出してくれます。速乾性の高い機能素材の象徴が「クールマックス🄬」。ほかにも高い速乾性を誇る高機能生地が増えています。

防シワ性

暑い日こそ、訪問時などの必要なシーン以外ではジャケットを脱ぎたくなるものです。そんな時に心配なのがシワ。シワが入ってしまっては、せっかくのスーツ姿も台無しになってしまいます。だからこそ、夏用スーツにおいて「防シワ性」は大切です。スラックスのクリース（センタープレス）が消えない「パーマネントプレス」も備えていたら、夏の出張も怖くありません！

防汚性

主に加工によってプラスされる「防汚性」とは、撥水や撥油によって汚れを付着しづらくする効果のこと。食べ物や飲み物はもちろん、皮脂の汚れもつきにくくしてくれます。もしも汚れが付いてしまっても、汚れを落ちやすくする効果もあるため、洗濯すればすぐにきれいな状態に。汗や皮脂で汚してしまいがちな夏にこそ助かる機能です。

接触冷感

「接触冷感」とは文字通り、触った時にひんやり感じる効果のこと。肌から熱が奪われると冷たいと感じるため、熱伝導率や熱拡散率を高めた生地には冷感があるのです。レーヨンやキュプラなどの生地には接触冷感の効果がありますが、最近は特殊なポリエステル糸を使って効果を生み出したスーツ生地も増加。通気性などを併せ持つ生地が大半なので、接触冷感を求めると他の機能性も確保できます。

ウォッシャブル

自宅で簡単に洗える機能が「ウォッシャブル」です。汗などで汚れても気軽に洗濯できれば、夏でも常に清潔なスーツが着られます。「ウォッシャブル」を細かく分解すると、「洗濯しやすい表地」、「乾燥しやすい芯地やパッド」、「洗濯機内でほつれにくい縫製」などの仕様に。それぞれ詳しくチェックすれば、効果の高さが予測できます。「ウォッシャブル」「速乾性」「防シワ性」などをまとめて「イージケア」などと表現することもありますので、機能性は細かくしっかりチェックしましょう。

爽やかな「明るめの色」を

色はダークなほど熱の吸収力が高まります。真夏に黒いスーツを着用すると、着ている本人も見ている周囲も実際以上に暑苦しく感じるのは、科学的な根拠があるのです。反対に、ライトなトーンのスーツは光を反射しやすく、着用感も見た目も涼しくなります。ということで、涼しいのに品格も感じられる夏用スーツにおすすめの色を紹介します！

ライトグレー

もっとも明るいカラーは白ですが、真っ白いスーツはキザな印象でビジネスシーンには不釣り合いです。そこで、現実的な選択肢はライトグレーとなります。また、ハウンドトゥース（千鳥格子）やグレンチェックなどの柄は、黒×白の色使いなら遠目からはグレーに見えるもの。そうしたモノトーンの伝統柄を活用するのもおすすめです。

ブルー

寒色系のカラーはやっぱり見た目も爽快。ネイビーやサックスブルーはビジネスシーンでも定番なので、積極的に使いこなしましょう。ブルー系のカラーに限ったことではありませんが、トーンが明るくなるほど爽やかで軽やかになる一方、カジュアルな印象も高まります。「爽やか」と「カジュアル」のバランスを考えながらスーツの色を選ぶのがポイントです。イチ押しは「ライトネイビー」。
ネイビーならではの落ち着きを備えつつ、明るいトーンの爽やかさも感じさせるからです。他の明るいブルー系はスーツで取り入れると派手な印象になりがちなので、TPOを考慮しつつ取り入れるのが賢明です。

ベージュ

ベージュのスーツは夏用として狙い目。上品でありながら爽やかさもあるからです。少し視野を広げると、カーキ系のカラーは定番でありながら、明るいトーンも選びやすいもの。オリーブなどのカーキ系を選ぶという手もあります。また、「ソローラ」や「サンクロス」、「サマーグリーン」と呼ばれる服地も要チェック。基本的にはベージュやオリーブに見えますが、光に加減によって色味が変わる玉虫色の生地です。イギリス人が植民地だったインドの日差しに対応するために開発した服地で、夏用スーツにも適しています。

まとめ

夏用スーツのディテールを解説しましたが、自分らしい夏向きのスーツを具体的にイメージできたでしょうか？ 夏でも暑く感じないビジネススーツがあれば、ビジネス上のストレスを1つ減らせるということ。もっとも涼しい盛夏用のスーツを揃えれば、快適に過ごせる効果が実感しやすいはずです。

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