スラックスとはどんなもの？

辞書などで意味を調べると、「スラックス」は「フルレングス（ロング丈）パンツ全般」などと書いてあります。しかし、実際に使われている意味はもう少し限定的。ロングパンツの中でも「スーツなどに合わせるドレスパンツ」を指します。以下で詳しく補足しましょう。

スラックスの意味は「ゆるい」

「スラックス」は「slack」の複数形で、「ゆるみ、たるんだ部分」といった意味があり、もともとはタックなどでゆとりを持たせたパンツのことを指していました。スーツのパンツがそうした仕様だったことから、スーツに合わせるようなドレスパンツをスラックスと呼ぶようになったようです。 ちなみに、「slack」という単語からチャットツールを思い浮かべるかもしれませんが、そちらは「Searchable Log of All Conversation and Knowledge」のアクロニム（頭文字を取った略語）なので直接的には関係なさそうです。

スラックスのディテール

現在のスラックスもタック入りが主流ですが、ノータックでもスラックスと呼びことがあります。フロントはボタン式もファスナー式もありますが、そうした留め具を布で覆って隠せるように、前立てを二重にした「フライフロント」が原則。サイドポケットも目立たない「スラントポケット（斜め切りポケット）」が基本で、全体的にシンプルかつ上品に仕上げいているのがスラックスの特徴です。また、ベルトを通して固定できるように、ベルトループが付属しているのが標準仕様。「センタープリーツ」が入っているほうがよりエレガントな印象になります。

スーツパンツ、チノパン、ジーンズとの違い

「スラックス」はパンツのデザインや仕様を表した呼び名。ビジネススーツのパンツも原則としてはスラックスです。スラックスの生地はスーツの共地やそれに近いものが大半ですが、どんな生地を使わなければならないかは決まっていません。それに対して「チノパンツ」は、「チノクロス」という生地を使ったパンツを意味します。また「ジーンズ」や「デニムパンツ」は、「デニム」生地を使ったパンツのこと。そのため、デニム生地を使ったスラックスがあっても矛盾はなく、実際「デニムスラックス（デニスラ）」などと呼ばれて人気を集めています。

スラックスはどんな時に穿く？

スラックスは生地が限定されていないため、生地やそれを活かしたシルエットによって印象が一変します。だからこそ、ビジネスやフォーマル用だけでなく、カジュアル用までさまざまなバリエーションが登場。とくに最近は、ワイドなテーパードシルエットを採用しつつ、イージーパンツの仕様も取り入れた「イージースラックス」などのリリースが増えています。ただし、本来のスラックスはあくまでビジネススーツのパンツとほぼ同義で、素材も仕様も上品。ビジネススタイルに最適で、単体のスラックスはジャケパンスタイルを始めとするビジカジスタイルなどで重宝します。

上品に着こなしやすいスラックスを選ぶ時のポイント

バリエーションが拡大しているスラックスですが、ビジネススタイルやそれに近いキレイめなコーディネートで用いる場合は、アイテム選びがかなり重要。ポイントを解説しますので、購入時の目安にしてください。

体型に合ったサイズを選ぶ

スーツのルールと同じく、ビジネス仕様のスラックスもジャストサイズが基本。カジュアルなスタイルでは少しユルめのオーバーサイズでも構いませんが、ビジネススタイルではルーズでダラしない印象につながってしまうからです。反対に、ジャストサイズのスラックスをきちんと穿きこなすだけで、コーディネート全体の品位がアップします。

・腰周り

サイズを選ぶ際のポイントは「腰回り」。もう少し細分化すると、ウエスト〜ヒップ〜太ももを中心にチェックするのが基本です。ウエストは指1本くらいの余裕があるのが目安。実際に試着して、ヒップや太ももに不要なシワや食い込みが発生しなければOKです。さらに、屈伸運動をしてみて破れそうな感覚がなければ万全と言えます。サイズを選んでいる際に、ウエストとヒップのどちらかしかジャストなサイズがない場合は、ヒップを優先するのが基本。ウエストのほうがお直しがしやすいからです。どうしてもジャストなサイズが見つからないなら、お直しではなく最初からオーダーメイドしてみましょう！

・裾周り

「裾幅」は絞られているほうがスリムでスマートな印象になりますが、極端に狭くするのは避けましょう。自然なテーパードシルエットなら、エレガントな印象が漂います。 「裾丈」は、どう穿きこなしたいかによって目安が変わりますが、上品なセットアップやジャケパンスタイルであれば、ハーフクッション程度が今どき。パンツがたるんで生まれるシワをクッションと呼びますが、スラックスの裾が革靴に少し掛かってシワが少しだけ入る程度が適正ということです。ビジカジスタイルでは、少し短めのノークッションでもOK。さらにカジュアルに着崩す場合は、アンクル丈（くるぶし丈、九分丈）で抜け感を加味するという手もあります。

色のバランスに気を付ける

スラックスを品良く穿きこなすには、コーディネート全体でカラーリングを意識することが重要です。前提として、スラックスもスーツの定番カラーや定番柄がそのまま適用され、オールマイティーに使えるのは無地。トーンが明るくなるほどカジュアル度も高くなる原則も一緒です。単体のスラックスをビジネスシーンなどで穿く場合はジャケパンスタイルが定番ですが、その際の色使いは「ネイビーのジャケット」に「グレーのスラックス」という組み合わせが王道。色を入れ替えても成り立ちます。上下ともダークトーンだとかなり落ち着いた雰囲気に。スラックスかジャケットのいずれかを明るめの色にすると、明度のコントラストが生まれて適度にカジュアルダウンできます。スーツスタイルとの差別化も叶いますので、「ダークなジャケット」×「ライトなスラックス」などの色使いも試してみてください！

素材に注目する

スラックスの定番生地はスーツ地。ウールをメインにしたドレスな生地が主流です。ただし、同じウール製でも夏物と冬物では生地感が異なります。コーディネートの中で季節感がチグハグにならないように注意しないと、違和感が生まれ不自然な印象になってしまうので要注意。素材や生地の季節感を統一するようにしましょう。また最近は、ポリエステルやポリウレタン、ナイロンなどの化学繊維を駆使した高機能生地も増加。ストレッチ、撥水、吸湿、速乾、冷感、発熱、保温、形状保持、防シワといった機能を季節に合わせて活用すると、スラックスは快適に着用できます。

お気に入りを長持ちさせるためのスラックスのお手入れ方法

上質なスラックスは上質なスーツと同じ生地を使っています。そのため、スーツのようなケアやメンテナンスが不可欠。主要なお手入れ方法を紹介します。

「ブラッシング」で汚れやホコリを落とす

着用後は早めにブラッシングをするのがおすすめ。ブラッシングにより、生地に付着した汚れやホコリなどを掻き出して取り除けます。繊維の間に汚れがついたままで放置してしまうと、変色やカビが発生してしまうので、原因は早めに排除するのが効果的です。また、ブラッシングによって繊維を起き上がらせて整える効果も。摩擦や圧力によって寝てしまった繊維をそのままにすると、生地のテカりにつながってしまうので、早めにケアするようにしましょう。

「ハンガー」でシワや湿気を取り除く

スラックスを穿いた後は、ハンガーに掛けるのが最善策。脱いだままにしておくとシワが入ってしまいますし、きちんと畳んでも湿気が籠もって生地を傷める原因になってしまいます。そのため、干すようなイメージでハンガーに吊るすのです。イチ押しは、スラックスを折らずに使えるパンツ専用ハンガー。裾を上にしてクリップに挟むと、より重い腰回りの部分に引っ張られ、パンツ自体の重みでシワが自然と伸びます。

休ませるために「連日の着用は避ける」

きちんとお手入れできていても、同じスラックスを連続して着用するのは避けたほうがベター。ハンガーに掛けて陰干しする時間をしっかり取らないと、湿気が溜まって生地が傷みやすくなってしまうからです。毎日のようにスラックスを穿くなら、2〜3着を使い回すのが理想的。穿いた後に2〜3日ほど休ませることができれば、湿気は取り除くことができます。そもそもスラックスは、座る際などに摩擦が起きて生地が損傷しやすいので、予備を揃えておく意味でも数着を穿きまわすようにしてください。

まとめ

詳しく解説しましたが、実際のところは「スラックス」＝「スーツ用（と同じデザイン）のドレスパンツ」と考えて差し支えありません。スーツはジャケットとスラックスのセットで、それぞれ単体で使えるセットアップ仕様なら、スラックスを他のコーディネートに流用可能。そのスラックスが単体でも売っていると考えれば良いのです。例えば、〈SOLVE（ソルブ）〉でもスーツがオーダーできるので、そのスラックスを単体として流用し、ジャケパンスタイルやシャツスタイルで使ってもOK。オーダーメイドで自分仕様に誂えたジャストサイズのスラックスは、あらゆるコーディネートを品良く格上げしてくれます。

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